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スコップで砂をすくっては積み上げるという作業を、二人で続けた。あちこちに穴ぼこができる一方で、一つの砂山だけがどんどん大きくなっていった。
こんなことをして、何が楽しいのだろう。本当に、子供のやることはわからない。少しだけ遊びに付き合ってやったら、すぐ立ち退いてもらうつもりだったのだが、何だかもう虚しさで胸がいっぱいだった。
「なあ」
退屈を紛らすように、僕は声を漏らした。少年が、作業の手を止めて振り返る。
「なあに」
「お前も、不登校なのか」
「ふとーこー?」
「学校行ってないのかってこと」
「あ、うん……」
言いにくそうに、少年は顔を逸らした。
「おにいちゃんも、行ってないの? がっこ」
「まあな」
全然、誇れることじゃない。だけど僕は、力強く言ってやった。
「お前、小学生か」
「うん」
「そんな頃から学校行ってなくて、どうすんだ。僕なんて、小学生の頃はずっと学校行ってたぞ。皆勤だ」
「かいきん……?」
よくわからない、というように少年は首を傾げる。しかしすぐに、口元を綻ばせて言った。
「なんかすごいんだね、おにいちゃん」
「当たり前だろ。お前、学校行けるように頑張れよ」
「うん。おにいちゃんもね」
「余計なお世話だ」
僕はちょっと“むっと”して、立ち上がった。何だか興が削がれてしまって、今日はそのまま帰ることにした。
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