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「じゃあ、お願いするよ」
「うん、行ってきまーす」
――賢者歴三〇四〇年、四ノ月。
ユリアシュア大陸北西部、パルナ村。
山の中腹に広がるこの村を含む山脈一帯は、聖都フィルケミナから馬車で四日程かかるのだが、特殊な高山資源が豊富であり、村と呼称するにはやや大きい。
そんなパルナ村のメインストリートは、珍しく朝から賑わいを見せていた。
村の中心からやや南に外れた場所にある噴水広場。
今日は村の設立記念祭であり、更に珍しい客が遠方から訪れているのだ。
「されど、炎龍は動かなかった。『王がおらぬ世界、誰が統べようぞ』」
「おう、ってなぁに?」
「ずうっと昔にいた人よ。賢者様のように世界を守っていたの。ほらもう最後よ」
「森と嵐も龍に頷く。『さぁ行け。君行く先に幸あらんことを!!』」
一際大きな歓声が上がり、拍手が広場中に響き渡る。
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