†歌†

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少し走ってから、ミーシャは自らが住む家に戻ってきた。 「ただいまー」 一階で薬屋を営むこの家で、ミーシャは祖母と二人で暮らしている。 店のカウンターで、薬草を炒っていた祖母は、顔を上げ、眼鏡を外した。 「あぁ、お帰り。ありがとうね」 「うん。店番代わるから、奥で作って大丈夫だよ」 「祭行かんでええのかい?」 「うーん、でも魔術の勉強もしたいし」 「そうかえ? まぁ、ミーシャがええなら、しつこう言わんよ」 そう微笑むと祖母は、カウンターの奥にある扉の向こう側に消えて行く。 入れ違いにミーシャはカウンターの中にある椅子に座ると、使い込んだ分厚い本を取り出し、ぱらぱらと頁をめくっていった。 「えーっと……」 指で文章をなぞり、時折首を傾げながら頁を進めていく。
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