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ミクは1階席のB通路を蝶々が降りていくのを見届けたあと、2階席への階段を上がって行った。
ミクは、PAスピールは苦手だが、再入場の仕事は好きだった。
1階から3階までモニターをしながら動きまわる。
一回のショーの間に1~3階すべての位置からショーが見られるこのポジションが大好きだった。
いよいよショーのクライマックス、フォグの時間が来た。
再入場のこのタイミングでの仕事は、1階席後方の壁に並んで据え付けられた6台のモニター画面で四方八方から噴出すフォグで包まれる客席を監視することだ。
フォグが噴出したそのとき、1階席C通路沿い前方に座っていたゲストが突然立ち上がり後方の扉方向へ歩き出した。
ミクはすぐにそのゲストのところへ走った。
外国人の白人女性だった。どうやら妊婦さんらしい。
「お客様どうされました?」
その女性は苦しそうにカタコトの日本語で言った。
「オ・ナ・カ・ガ・・・ア・カ・チャ・ン・ガ・・・」
そう言いながら、ミクに寄りかかって来た。
会場内のゲストはみんな、カーテンコールでステージに勢揃いした出演者に大きな拍手を送っている。
だれもこの白人女性とミクに気が付いていない。
「どうすればいいの?」ミクの顔から血の気が引いて言った・・・・
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