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彼が息絶えた日から遡ること3日前に時間が戻ります。
いつものようにシルバーランドで深夜のカストーディアル業務を行っていると突然彼の前に見たことのないコスチュームを着たキャストが現れました。
ネームタグからキャストであることは間違いないが今まで一度も見たことがないコスチューム。その男はおもむろに彼に話しかけてきた。
「こんばんはNさん。
私は、ウォルト・ディズニー・フューチャーライド・リサーチ、通称WDFRの『ケビン』と言います。あなたに重要なお話があって参りました。」
と一方的に話し始めた。
「突然で驚かれたことと思いますが、まずWDFRについてお話しましょう。
これはWD公認の非公開組織です。
我々の役目は、年間何百枚も配布されるフューチャーライドカードの管理を行うことです。
このカードが発券されるようになった2000年初頭から配布されたカードの多数が回収されないまま眠っていますが、その履歴を把握するため、2010年頃から秘密裏にカードに特殊なICチップを埋め込み、配布されたカードが世界中どこにあっても所在がわかるようにしました。当初は回収率等のデータを集計したりしていましたが、それよりも重視すべきことがあることに気が付き、現在は主にカードを持って再来園されたゲストのマジックモーメントの調査を主体にしています。
私はそのエージェントであり、きょうは30年後の日本支社から時空を越えてやってきました。」
唐突な話に返す言葉もない彼に、ケビンは話を続ける。
「実は、きょうから4日後に一人の少女がTDSに来園します。
その日は彼女の誕生日であり、この日にフューチャーライドカードを使ってレイジングスピリッツに乗ることをずっと前から決めていました。
それはあるキャストとの10年前の約束によるものです。
当時6歳であった彼女は家族と共に初めてTDSを訪れました。
好奇心旺盛な彼女は、レイジングに乗りたいとスタンバイエリアまで行きましたが、身長制限のため利用できないことがわかりました。
泣きべそをかいている彼女を優しくなだめ、フューチャーライドカードを渡したのはひとりの年老いたキャストでした。
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