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そんな無用の長物と精霊の力を互いに貸し合う関係は、ヒト側からすればメリット以外の何物でもないのだが。
断り続ける理由ならば、有る。あれは今から十数年前の、
という所で──
「──ぬふ。六百と六十六。それがリッキーが今までに追い返した精霊の数だよ。しかもしかも、この間のワンちゃんなんてフルボッコ! まったく、ちぇんじは大人になってから!」
抑揚頓挫(よくようとんざ)。
不意に、何か物凄く聞き覚えのある声が、つい数分前に聞いたような声がリッキーの聴覚を刺激した。
首だけ動かしてそちらの方を確認してみれば、先ほど門前で追い払ったはずの桃髪幼女が、テーブルに席ついて口に何かを運んでいるのが見て取れる。
更に目を凝らすと、幼女の口に放られているそれは、リッキーが今まで大事に貯蔵していた食糧だという事がすぐに分かった。
猪肉の燻製
自家製チーズ
野菜根菜
魚の干し物
果物類
その他諸々
「何してんのお前ぇええええええ!!」
たまらず飛び起きるリッキー。
指を差して思い切り叫ぶが、当の本人は微塵も気にせず食を進める。
今、桃髪幼女が頬張っているのはリッキーの山小屋生活を支える大切な物。
定職に就いていない、つまるところ完全無欠に金欠な男の生命活動を補う最大の財産だったというのに。
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