序 章 咆哮は拳と共に

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 妙にスローモーションに映る《逆さま》の景色の中、人外は思う。  人間如きに遅れをとるつもりは毛頭ない。なかったのだが、結局のところこれが現実。  こんな事になるならば、自身の細胞が発する警告信号に耳を傾けていればよかったと。  しかし、時既に遅し。  宙を舞っていた体は上昇を終え、降下──それまで体を覆っていた時間の遅延感覚が元に戻る──そして、グシャリと鈍い音を立てながら、まるで先に切り飛ばした倒木のように地面へ叩きつけられた。  薄れていく意識の中、人外は確かに見た。  人間の首に巻かれた黒い布の下にあるものを。  、、、、、、、、、 、、  マフラーで隠された、歪な── 「ああ、首筋が痛えよバカヤロー」  人外は最後にそれだけ聞き取り、程なくして意識を失ったのだった──  
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