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「──おいダメ息子、じゃなかったリッキー! そろそろボクとえっと契約しないとあの……あれ、蛇の生殺しなんだかんねッッ!!」
旭陽(きょくよう)。
東の空が明るい。
深緑の山々に降り注ぎ始めた陽光。暦の上では春なれど、夜明けの空気は未だに冷える。
証拠に、山腹から上はうっすら霞みがかっていた。
かつては断層運動、隆起、火山活動、堆積、浸食などの地理的要因により形成された岩石まみれの武骨なこぶも、月日の経過と気候次第で景観を変える。
木々が生い茂るこの山地も、はるか昔は岩に覆われていたのだろうか。
そんな山の麓。
少し拓けた場所に在る小屋に、甲高い声が響く。
「あとであれ、ひどいんだかんねッッ詳しくは言わないけど!」
脅し文句なのか、はたまたもっと別の糾弾なのか。
それにしては粗雑すぎる言葉選び。
声の主が桃色髪の幼女であるからそれも仕方のない話ではあるが。
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