Maybe,it is an introduction .

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「ふぁー…あ。眠かったさー…。」 「と言うか兄ちゃん寝てたよね。入学式の挨拶の時。」 「いやいや、兄ちゃんは別に感動のあまり目を閉じてただけさー。」 「えー。」 芝生の上に、道を示すようにしかれた様々な色の石畳。 そのなかでも寮へと続く薄紫の道を歩きながら、二人してあくびをした。 「兄ちゃん寮の部屋番号はー?」 「男子塔三階の195号室さー。しかもなんと一人部屋。」 「あ、いーなー。私は五階の580だよ。しかも三人部屋。」 「なら遊びに忍び込んでおいで。バレないように気を付けるさー。」 「そーする。」 異性の寮へと行くことはしっかり校則違反である。 勿論、ソレを知った上での会話だ。 「じゃあ、シュリ、明日からここで朝は待ち合わせるさー。で、朝食と。」 「りょーかい。」 「寝坊しちゃいかんけんねー。」 「大丈夫、大丈夫!」 道の分かれ目にたどり着くとカイリはシュリに目線をあわせた。 「誰かにいじめられたらすぐに兄ちゃんとこ来るんさよ。」 「わかってるよー。兄ちゃん過保護ー。」 「今更さー。」 そしてシュリがくるりときびすを返した、その時だった。 “シュリ” 声が、聞こえた。 カイリは既に自分の寮へと歩き出してしまっている。 頭の中で響いた声にシュリはわずかによろめく。 “シュリ” 見つけて、と囁く声は気のせいではなかった。 聞いたことのある、良く聞いているはずの声なのに、その声の主が思い当たらない。 “俺を見つけて、シュリ” (…わけが、わからん…) 自分は霊媒体質だっただろうか。 “俺を見つけてよ、シュリ” (わ、悪いものでもなさそうだけど…。) 違和感がのこる。 切なくなるような声を聞きながら、シュリはふらふらと寮へと歩くのだった…。
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