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『くすくすっ…、あの子でしょう?例のホニン族の子って…。』
“見つけて、シュリ”
『お兄様の方は素敵みたいだけど…。ねぇ?』
“俺の声は届いてるんだろ?”
『ほんと…。血縁に甘えるなんて非常識よ。』
“シュリ”
(っあ゛ーーー!やかましい!!!!)
シュリがペンタクルに入学して一週間、声は、響き続けていた。
それがシュリに対する噂の声とあいまって、賑やかなことこの上ない。
入学後の最初の学力テストの時も、授業中も。
クスクスこそこそ、なあ聞こえてる?がエンドレス。
シュリももういっそカイリに相談してみようかとも考えたが、カイリはカイリで忙しそうである。
主に女子のラブラブ光線(シュリ命名)をかわすのに。
(…なんで私に頼るのさー。)
本当ならば、今すぐ教会に駆け込みたいがホニン族のさがか、困っているであろう人(魔物?)を妙に放っておけない。
“俺の声は、シュリにしか届かない。それに、シュリは俺と約束をしてる。”
(…妄想?)
脳内で会話が成立してしまっている辺り恐ろしい。
「はぁ…」
シュリが小さくため息をついたその時だった。
「おはよーシュリ。良い朝さね!」
不意にカイリが現れシュリの顔を覗き込む。
「兄ちゃん…、おはよー。」
「?…元気がないさー。何かあったん?」
「うんにゃ!お腹がすいただけー。」
カイリと話しているときは声は聞こえない。
シュリは笑みを浮かべた。
「ごはんにしよー。」
「そーやんね!」
内心、後で図書館に調べに行こうと考えながら。
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