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甲高く叫んだ女に、僕は冷静に返す。
こういうタイプはどうやったって引き下がってはくれない。
きっとずっと異を唱え続けるだろうから。
「私は…、」
さっきまで大きな声で主張していた女は、一転俯きボソボソと話し出した。
声が聞き取りにくく怪訝な表情をすると、顔を上げてギっと視線を強くして睨みつけてきた。
そして放たれた女の言葉は、僕を不機嫌にさせるには十分だった。
「私は彼の婚約者ですっ!」
「へぇ?だから何ですか?」
冷静さをなんとか保ちながら対応する。
実際はイライラきてるよ、流石の僕でもさ。
だって婚約者がいるなんて、初耳なんだから。
この女が勝手に名乗っている可能性もある。
それはそれでイラっとくるけれど、もし仮に女の言うことが真実だとしたら…。
そんな可能性が消えないことに苛立った。
なんたってタクは御曹司なんだから。
今まで婚約者の話題がでなかった方が不自然なんだ。
意図的にタクが隠していた、ということなんだろうか。
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