ドリームコントロール・死

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「たまに寂しくなっちゃうけど、大丈夫なんだから。私ね、お母さんのことをしっかりと覚えておくことにしたの。お母さんは私の心の中で生きてるんだよ。犬と猫の本に書いてあったんだ」 「犬と猫の本?」 「うんとね、犬と仲良しだった猫が死んじゃうの。犬はそれからどうするかと言うと、猫のことを忘れずにずっと思っておくことにしたの。犬は猫を忘れないことで、猫は犬の心の中でずっと生きるの。お母さんもね、ずっと私の心の中で生きてるだよ。忘れない限りね。私ね、絶対忘れないよ。いっつも、いっつも、お母さんのことを想うの。だからね、夢なんか見なくても大丈夫なんだから!」 そう言うと娘は泣き出した。野沢は娘を抱き寄せた。 「そっか、そうだったのか。それで良い、それで良いんだぞ。お母さんもきっと喜んでるよ」 野沢は娘の強さを知った。いつの間にか娘は強くなっていた。これなら妻がいなくても大丈夫な気がした。 恵美子、唯は強い女になるぞ! お前みたいな強い女になる! この家庭に、ドリームコントロールは不要だった。
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