第壱章

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朝から雨が降ってた。それなのに、私は白いワンピースを着てきてしまった。 裾に泥はねがつく。 「…秋、おそいな」 腕についてる腕時計をみた。 待ち合わせ時間から一時間近くおくれてた。 私の名前は安井 悠梨。 多分、今までの人生の中で一番幸せな時間をすごしてる。 好きな人をまってる時間が、一番好き。勿論、2人で居る時間も好きだけど、早く着て相手がくるのを待つのが大好き。 相手が私を見つけて走ってくる姿も好き。 でも、何故か今日は遅い。私が待っている桜庭 秋は、私にできた初めての恋人だ。 「悠梨っ遅れてごめん!!」 「…あ、秋君!!」 傘を差した人ごみの中、秋君は傘も差さずに私に駆け寄ってきた。 「…ワリ、遅れて」 「大丈夫だよ。それより秋君大丈夫?風邪引いちゃうよ?」 「…大丈夫。じゃあいこっか」 さり気なく私を車道からとうざけて、私の手をにぎる。そんな仕草にいちいちときめいてしまう。 横顔をみると、耳まで紅くなっていた。 同じ気持ちなんだと思うと、胸があたたかくなった。 秋君はみんなから好かれてて、正直嫌われ者の私とは釣り合いがとれてなかった。 高校で同じ学校で同じクラスになれたけど、クラスでは殆ど話さない。 秋君の周りには自然と男の子達が集まって、そのうちに女の子も集まっていく。 私は、女友達が一人いるだけ。クラスの女子には嫌われてる。理由が、秋君と付き合ってるから。 まるで月とスッポン。 秋君は私がみんなに嫌われてるなんて知らない。  
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