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『遅刻』という言葉で、火がついた千夏は、あの後あり得ないようなスピードで学校に行く準備をしていた。
「ごめんなさいお兄ちゃん!」
「やっと覚醒したみたいだな。」
「いいから早く!」
「はいはい。」
倉庫から引っ張り出してきた自転車の荷台に千夏を乗せ、しっかり乗ってる事を確認して出発した。
「ふふっ!」
千夏は、俺にしがみつきながら笑っていた。
てめぇのせいで遅刻しそうなのに、いいご身分だぜ…
「俺が激こぎしてんのそんなに面白いか?」
「楽しいのは、それじゃないよ♪」
嫌みたっぷりに質問してみたんだが、それでも千夏は、悪びれることなくにこにこしていた。
「つか、くっつきすぎだろ。」
「いいじゃん。妹なんだから。」
「普通の義妹はそんなことしねぇよ!」
千夏の中での兄妹像は、一緒に寝たり、二ケツするときピッタリくっついたりするような、仲むつまじいものだと思っているんだろうか?
「すりすり~♪」
「人が頑張ってる時にすりすりすんな!」
「えへっ♪」
つか、そんなにくっつかれると胸が、胸が当たるんですが……
「お兄ちゃんがんばれぇ!」
俺がそんな事を思ってるとはつゆ知らず、千夏は、無邪気に荷台ではしゃいでいた。
「……」
俺は、無心でチャリをこぎ続けた。
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