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「……影、おい月影!! 」
「あ、はい」
「あ、はいじゃなくて、いきなりどうした? 」
「いえ、何でもないです。すみません、少しボーっとしてました……」
軽く頭を下げて心優さんを見る。心優さんは今の状況でか? とでも言うように、訝しげな顔で僕を見ていた。
そしてそのままお互いに目を反らさずに数秒、観念したように心優さんはため息を吐く。
「まぁ良い、これ以上は余計なお世話だな……だが月影、これだけは覚えておけよ? 過去に何があったか知らない、そんなに興味もないが、お前は御伽屋の従業員で私達の仲間だ。時間と信頼関係はイコールじゃない。だから本当にやり切れなくなったらいつでも頼れ。その時は私達はお前の為に全力を尽くす」
その目に込められた強さと意志に、僕はただただ魅入る。
「ありがとうございます……」
もしかしたら……そんな淡い期待が胸を掠め、僕はそれを慌てて振り払った。
何を考えてるんだ僕は……もう人との関わりは表面上だけにしようと決めたじゃないか。
喜怒哀楽の仮面を貼り付け、その仮面を墓まで持って行こうと……
ひょっとすると、心優さんには僕の心が読めたのかもしれない。小さく何かを呟くと「ま、無理はするなよ」とだけ言い残し、書庫の方へ歩いて行ってしまった。
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