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シャントとイグニが飛んで、ある場所に向かっている。カズミはそれを一生懸命追う。
そして目的地に着いたのか、2体は草原に降りた。
カズミもその後に続く。
やって来たのはさっきシャントが来たあの大草原だ。まだ周りには動物がいない。
その為、風と草木が揺れる音しか聞こえない。
「ここは?」
カズミがシャントに聞き出した。
シャントは自信満々にカズミを見て、答えた。
「僕のお気に入りの場所。この時間帯は動物が居ないんだ。だから静かにリラックスできる。」
確かにここはかなり居心地がいい。
イグニもここが気に入ってるらしく、目を細めて、風の感覚を感じ取っていた。
「はぁ…なるほどね~…。」
カズミはシャントに感心した。よくこんなにいい場所を見つけたものだ。
ここはかなり気持ちいい。
「さて、カズミ。ここ気に入った?」
カズミはいきなり聞かれて驚いたが、すぐに「うん」と優しく答えた。
「グギュルルル…。」
誰かの腹の音が鳴った。
その腹の音を出したのは、シャントでもカズミでもない。
腹の音を出したのは、イグニだった。
「…………ゴメン…。」
イグニは恥ずかしそうに下を見ながら小さく言った。
「……イグニ…。確か、一昨日狩りに行ってなかったけ?」
シャントは何故イグニの腹が鳴っているのか分からなかった。
自分と同じ時間帯に狩りに出かけた筈だ。イグニの腹があんなに鳴るのだから、自分も少しは腹が減ってもいいはずだ。
しかし、シャントは全然腹が減っていない。
「お前…あの時の僕の収穫、忘れたわけじゃないよな。お前は大きな鹿を二頭も喰えたからいいけどよ。」
イグニの言葉でシャントはようやく思い出した。
確かあの時のイグニの収穫は、それはそれは悲しいものだった。
「仔牛一頭…だっけ…?」
イグニは首を縦に振った。
それと同時にイグニの腹も返事をした。
そのあまりにも少ない収穫の量に、カズミは苦笑いしてしまった。
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