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やはりここは風が気持ちいい。ここは最高の場所だ。
シャントは草原で軽い昼寝をしていた。
すると、覚えのある匂いがした。
この匂いは…。
…ドスン。ドスン。
2体のドラゴンが草原に降りた。シャントは寝ていた体を起こした。
「お帰りイグニ、カズミ。どうだった?」
イグニはシャントに向かって親指を立てた。
どうやら狩りは大成功だった様だ。
一方のカズミは納得した様な表情をしているので、狩りの仕方は分かったらしい。
シャントは思わず笑顔になっていた。
「そうだカズミ。」
いきなりイグニがカズミの方を見て、カズミに話しかけた。
「ん?な、何?」
カズミはなんとなく嫌な予感がした。しかし、今の自分の状況を、何時までも隠し通すわけにはいけないだろう。
これは仕方がない事だ。問題はシャントとイグニが自分の言ってる事を信じてもらえるか。
いや、信じてもらわなくてもいい。
自分は元々、シャント達と一緒にいる気などなかったはずなのだから。
「お前は…一体何者なんだ?」
やっぱりその質問か。
カズミはそう思った。そう思うのも無理はないが。
やはり、言わなければいけない。例えそれが信用されなくても。
カズミはひとまず深呼吸し、ついに自分の今の状態を、シャント達に明かした。
「俺は…元々は人間だ。目が覚めたら、俺はこんな姿に…ドラゴンになってたんだ。」
「人間?」
イグニが驚いている。側にいるシャントもイグニと同じ表情をしている。
しかしそんな事は気にせずに、カズミはどんどん話を進める。
「人間だったから俺は、狩りの仕方を知らなかった。何で俺がドラゴンになったのかは分からない。気が付いたらなってたんだ。人間だった頃の記憶がないし、何が原因でなったのかも分からない。でも分かったことは、俺はドラゴンになって、記憶を失い、異世界に来てしまったって事だけだ。」
「い…異世界?」
ようやくシャントが会話に入ってこれた。
しかしにわかに信じがたい。目の前にいるカズミは、どこから見てもドラゴンだ。しかし、彼は自分は元人間だというのだ。
こんな話信じられるだろうか?
やはり信じられない。でも…。
しばしの間、沈黙が続いた。
シャントもイグニも、さっきから黙ったままだ。
カズミは溜息を吐くと、こう言った。
「やっぱ…信じられないよなぁ…。」
カズミは多少諦めモードに入っていた。
その時…
「いや、信じるよ。」
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