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え?今、信じるって言った?
俺の言ったことを信じるって言った?
カズミはたったのあの一言で混乱した。てっきり誰も信じてくれないだろうという事を誰かが信じたのだ。
一体誰が…。
「信じるよ。だって、カズミは友達だから。」
シャントだった。
何かいきなり友達に勝手にされているが、そんな事はどうでもよかった。
重要なのは、シャントが自分の言ったことを信じてくれたことだ。
「え?信じて…くれるの…?」
まだカズミの頭は混乱していた。
何でこんなことを信じてくれるんだ。一体何で…。
「それに、ほっとくわけにもいかないよ。」
シャントが元気よくそう言った。
「え?」
「だって、記憶喪失なわけでしょ?確かに最初はびっくりしたけど、記憶喪失と聴いちゃあ黙っちゃいられないよ。」
シャントは相変わらずの笑顔で話していた。
何でどいつもこいつも簡単に俺の事を信じてくれるんだ。本当に…。
カズミは思わず泣きそうになった。
こんな暖かい声を聴いたのはあの日以来だ。
そう…あの日もこんな感じだった…。
しかし、今日は前とはちょっと違った。
「僕も信じる。」
そこにいたのはイグニだった。
「カズミが嘘吐いてるようには見えないし。」
イグニもこれまた笑顔だった。
そしてシャント同様、暖かい声を出していた。
カズミは我慢できず、ついに涙を流してしまった。
「あれ?カズミ。もしかして泣いてる?」
シャントがカズミをからかうかの様に、カズミに近づいてきた。
「うるさい…。お前ら…本当に面倒くさい奴らだな…。」
カズミは涙を流しながら、そうシャントに返した。
「ほら、また面倒くさいって言った。やっぱりカズミって、面倒くさがり屋さんなんだよ。」
シャントが嬉しそうに言った。
イグニも側で微笑んでいる。
カズミは涙を拭き、シャントに向かってこう呟いた。
「ちげ~よ、バカ。」
カズミの顔は涙の跡がまだ残っているが、この上ない笑顔だった。
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