ウォード

2/9
前へ
/378ページ
次へ
カズミは、シャントの洞窟で一緒に住むことになった。 シャントもイグニも、家族がいる洞窟から離れて暮らしている。 …と言っても、彼等の父親がよく息子に会いにくる。 今日もその例外ではなかった。 「よぉ!こんにちは!シャント!カズミ君!」 やけにハイテンションな白い巨大なドラゴンが、朝っぱらから挨拶をして来た。 「あ、おはようございます。バチスさん…。」 「父さん…。何でまた…。」 やって来たのはシャントの父、バチスだった。 薬草の知識は誰にも負けないと言われているドラゴンだ。いわゆる薬草博士といったところか。 シャントによると、よく薬草を探しに出かけるんだとか。 バチスの体色が白なのに、シャントの体色が黄色なのは、シャントの母親(名前は聞いてない)の体色が黄色だからだそうだ。 白に黄色を混ぜると生まれる色は薄い黄色。 絵の具と全く同じ仕組みでドラゴンの体色は決まるのだろうか。 しかし、シャントの色は薄い黄色というより、れっきとした黄色だ。薄くはない。 どうやら色は親のどちらかの色を引き継ぐ…と考えたほうが有効らしい。 「いや~、やっぱりもう一度カズミ君の顔が見たくてさぁ~…。あ、あとまた品種改良に成功したんだ。まぁ、薬草としての効果は薄くなっちゃったんだけど、植物としては綺麗だろ?」 そう言うと、ある植物をカズミ達の前に出した。確かに綺麗だが、薬草としての効果が薄くなったって、それは品種改良と言えるのだろうか。 もしかすると、バチスはただの植物オタクなのかもしれない。 ちなみに、カズミが人間である事はバチスとビレームにはまだ教えてない。知っているのはシャントとイグニだけだ。 しかし、記憶喪失だという事は教えている。 そうしたほうが、シャントのところに居候しても怪しまれないし、嘘ではないから騙した気もしない。 しかし、やけにバチスがしつこいのは予想外だった。
/378ページ

最初のコメントを投稿しよう!

752人が本棚に入れています
本棚に追加