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カズミは、シャントの洞窟で一緒に住むことになった。
シャントもイグニも、家族がいる洞窟から離れて暮らしている。
…と言っても、彼等の父親がよく息子に会いにくる。
今日もその例外ではなかった。
「よぉ!こんにちは!シャント!カズミ君!」
やけにハイテンションな白い巨大なドラゴンが、朝っぱらから挨拶をして来た。
「あ、おはようございます。バチスさん…。」
「父さん…。何でまた…。」
やって来たのはシャントの父、バチスだった。
薬草の知識は誰にも負けないと言われているドラゴンだ。いわゆる薬草博士といったところか。
シャントによると、よく薬草を探しに出かけるんだとか。
バチスの体色が白なのに、シャントの体色が黄色なのは、シャントの母親(名前は聞いてない)の体色が黄色だからだそうだ。
白に黄色を混ぜると生まれる色は薄い黄色。
絵の具と全く同じ仕組みでドラゴンの体色は決まるのだろうか。
しかし、シャントの色は薄い黄色というより、れっきとした黄色だ。薄くはない。
どうやら色は親のどちらかの色を引き継ぐ…と考えたほうが有効らしい。
「いや~、やっぱりもう一度カズミ君の顔が見たくてさぁ~…。あ、あとまた品種改良に成功したんだ。まぁ、薬草としての効果は薄くなっちゃったんだけど、植物としては綺麗だろ?」
そう言うと、ある植物をカズミ達の前に出した。確かに綺麗だが、薬草としての効果が薄くなったって、それは品種改良と言えるのだろうか。
もしかすると、バチスはただの植物オタクなのかもしれない。
ちなみに、カズミが人間である事はバチスとビレームにはまだ教えてない。知っているのはシャントとイグニだけだ。
しかし、記憶喪失だという事は教えている。
そうしたほうが、シャントのところに居候しても怪しまれないし、嘘ではないから騙した気もしない。
しかし、やけにバチスがしつこいのは予想外だった。
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