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「父さん。もう僕、出てってもいい?」
赤い体色をしたドラゴンが目の前で何やら洞窟をいじっている自分よりも数倍の大きさのある赤いドラゴンにそう言った。
「おいおい。これからがいいところなんじゃないか。もう少し我慢しろよ、イグニ。」
それを聞くと、小さい方のドラゴン、イグニは呆れながら口を開いた。
「それさっきからずっと聞いてる。」
大きい赤いドラゴンは「そうか?」とイグニに聞き返した。
最初の会話で分かってはいたが、彼らは親子らしい。
すると父親の方はいきなりイグニの方を向き、こう言った。
「しかしな、イグニ。俺達ドラゴンの寿命は長い。しかし、一日は24時間というのは変わりない事だ。そしてあれを発見したら、それはドラゴンの歴史上最大の発見だ。俺はその歴史を早めに記し
「ただ有名になりたいだけでしょ。」
息子、イグニの言葉がイグニの父親の心を傷つけた。
イグニの父親はすっかり落ち込んでしまい、その場に座り込んだ。
「いや、別に…そんな…訳じゃ…ない…と思うけど…。」
ブツブツと小さな声で呟くドラゴン。
実の父親を傷つけた張本人であるイグニは少し呆れた表情をし、その場を飛び立った。
やはり暇だ。
黄色いドラゴンはまた寝そべり、色々考えていた。
何か面白い事は無いだろうか。
技の練習に使う練習場は今、子供の小さなドラゴンが遊びに使っている。
遊ぶ相手も、場所も無い。
ただ此処でボーッとしているだけだ。
いつもならリラックスできるのだが、昨日は対して疲れる様な事はしなかった。
昨日はあいつと話していただけだったから。
「イグニの奴…まだビレームさんの手伝い終わんねぇのかなぁ~…。」
あいつ…イグニはイグニの父親であるビレームさんと一緒にある発掘の手伝いをしている。
…と言ってもビレームさんが無理矢理自分の息子であるイグニに手伝わせてる様だ。
自分もイグニと一緒にビレームさんの手伝いをした事がある。
あれは地味な作業だ。岩を地道に削っていくのだ。道具を使って。
一体何を発掘しているのかはイグニ本人も知らないらしく、イグニは「とりあえずドラゴンの歴史上最大の発見となる物なんだとさ。」と言っていた。
未だにそれが何なのかは不明だ。
「…まだビレームさんの手伝いした方がマシだったかな。」
彼は立ち上がり、ビレームがいるであろう場所に向かおうと翼を広げた。
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