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付き合ってられない。イグニはそう思いながら飛んでいた。
その時だ。
「シャント?」
この匂いは間違いなく友達…シャントのものだ。
匂いがするのは不思議では無いが妙な事がある。
シャントの近くに知らない匂いがあった。それはドラゴンの匂いだが、こんなに人間の匂いがするドラゴンはいない。
いるとすれば「ウォード」くらいだ。
つまり…
「シャントが危ない!」
イグニは急いでシャントの方に飛んでった。
「これって…人間の匂い?」
彼…シャントもようやく自分の目の前にいるドラゴンが人間の匂いを放ってる事に気付いた。
こんなに人間の匂いがするドラゴンは初めてだ。
ウォードなら人間を喰って人間の匂いを放つが、それよりも匂う。何でこんなに人間の匂いがするのだろう。
するとすぐにシャントは匂いの変化に気付いた。
「ん?人間の匂いが…薄れていく。」
シャントは青いドラゴンが放っていた人間の匂いが薄れていくのを感じた。
「シャント!」
空から声が聞こえた。
声の主はシャントのすぐ後ろに降りた。
「イグニ!?」
シャントはイグニに気付いていなかった様だ。それほど目の前のドラゴンが気になっていたのだ。
「シャント!ウォードは…」
イグニはシャントの前で倒れているドラゴンを見て唖然とした。
そしてそれを指差し、シャントに聞いた。
「シャント…倒したの?ウォードを…。」
「え?」
一瞬イグニが何を聞いているのか分からなかったが、青いドラゴンを見て納得した。
「いや、こいつはウォードじゃない。此処で倒れてたんだ。」
「え…でもこいつ、人間の匂いがしたぞ?それって人間喰ってる証拠だろ。」
「こいつの匂い嗅いでみなよ。」
イグニはシャントの言う通り匂いを嗅いでみる。
「人間の匂いが…消えてる…。」
訳が分からなくなった。確かに此処に倒れてるドラゴンは人間の匂いがしなかった。しかしさっきまではしてた。
これは一体…。
「なぁ、こいつ何なの?」
イグニはそれを指差した。
「あ、その事だけどどうしよう!」
いきなりの言葉にイグニは困った。
「は?」
「こいつ目覚まさないんだ!」
「……。」
シャントの言葉を聞いたイグニはドラゴンの手首に触れた。
「……脈はある。まだ生きてるな。」
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