ドラゴン

7/9
前へ
/378ページ
次へ
「どうした?」 ビレームがイグニに呼ばれて、シャントと倒れてる青いドラゴンがいる場所にやって来た。 「ビレームさん!」 シャントはビレームに近づき、状況を説明しようとした。 しかしビレームは、青いドラゴンの姿を見るなり目を細めて呟いた。 「なるほどな。まず、こいつをどうにかしないとな。」 どうやらビレームは一瞬で状況を判断した様だ。 「シャント。バチスの野郎、まだ帰ってきて無いのか。」 ビレームはすぐにシャントに質問した。しかし、シャントはその質問を聞いて首を横に振った。 「父さんは今日の夜に帰ってくるから…。」 「くそ、あの薬草マニアが。肝心な時にいないんだから、自分の趣味に没頭しすぎなんだよ。」 ビレームの言葉についイグニは「あんたはどうなんだ」と心の中で呟いてしまった。しかし今はそんな状況では無い。 理由は分からないが、今此処にドラゴンが倒れている。 「父さん。やっぱこいつ、病気?」 イグニの質問にビレームは少し考え込んだが、ある一点を指差して「それは違うんじゃないか?」と答えた。 そこには肉を無残にも噛みちぎられた、二つの頭を持つ、犬の様な魔物、オルトロスと三つ首の犬の様な魔物、ケルベロスの死体があった。 それも大量に。 「「全然気付かんかった…。」」 シャントとイグニは同時に全く同じ言葉を発した。 確かにこんな物があるなんて気付かなかった。 それもこれも、目の前のドラゴンばかり目がいっていたからであろう。 今思えば、このドラゴンからには少なからず血の匂いがする。 どうやらこのオルトロスとケルベロスの大群を絶滅させたのは、このドラゴンらしい。しかも無傷。 流石のドラゴンでもこんな大群に襲いかかれたら、怪我じゃすまない。 こいつは一体何なんだろうか…。シャントが再び思うとその時、青いドラゴンの目が少し動いた。 「あ!」 シャントはそれに気づき、声を出してしまった。 「何だ?どうかしたか、シャント?」 「ん?」 それを聞いたイグニとビレームはシャントの方に向かい、その青いドラゴンを囲む様な形になり、そのドラゴンを見つめた。 すると、そのドラゴンはゆっくりと目を開けた。
/378ページ

最初のコメントを投稿しよう!

752人が本棚に入れています
本棚に追加