ドラゴン

9/9
前へ
/378ページ
次へ
「よ…よろしくお願いします…。」 カズミは少し驚いた様な表情で、頭を下げた。 こういうのが苦手なビレームは「もういいよな」とシャントに確認をとった後、話を元に戻した。 「ゴホン!でだ。何で此処で倒れてたんだ?」 ビレームの質問にカズミは面倒くさそうに頭を掻きながら、こう答えた。 「……疲れて眠った…って感じですかね。」 カズミは、はっきりとこう答えた。 「なるほど。」 ビレームは納得すると、そのまま何も聞かなかった。 シャントとイグニも聞くことは無いのか、黙っている。 それをカズミは確認すると、背中をシャント達に向けて翼を広げた。 「じゃ、俺はこれで。」 カズミはシャント達の元から飛びだとうとしているらしい。 カズミが翼を動かし、飛ぼうとした瞬間。 「ちょっと待って!」 誰かの声がカズミを止めた。 カズミは声が聞こえた方を振り向く。そこにいたのはシャントだった。 「な…何?」 「せっかく会ったんだから、もう少し一緒にいようよ。」 「え?」 カズミはシャントの言葉を聞いて、思わず迷ってしまった。 自分は今からシャント達から離れたかった。しかし、それをシャントが止めるのはあまりにも予想外だった。 「いや、俺とはあまり… 「でもまだ戦った時の疲れ残ってるでしょ?もう少し休んだ方がいいよ。カズミは強いんだから体を大事にしないと。」 全く会話が成立しない。シャントは話を中断させるのが何故か上手い。 確かにカズミは今…というより今までずっと疲れていた。身体的な疲れもあるが、精神的な疲れがもっと酷い。 何故ならカズミは… 「まぁ…シャントの言う通りだな。まだ疲れてる様だし。もう少し休んだらどうだ?」 イグニもシャントの提案に賛成している。イグニの隣でビレームは思いっきり首を縦に振っている。 どうやらビレームも賛成のようだ。 「ほら、皆いいって言ってんだし。もう少し休んだら?」 カズミは仕方なく飛ぶのを諦め、溜息をついた。 「はぁ…。分かったよ。飛ぶのも面倒くさいし。はぁ…。」 カズミはまた溜息を吐いた。しかし、シャントはカズミの溜息よりもある言葉に反応した。 「分かった。カズミってもしかして、面倒くさがり屋さん?」 「え?」 カズミはシャントの放った言葉に驚いた。 どうやら自分が面倒くさがり屋という事に自覚が無かった様だ。
/378ページ

最初のコメントを投稿しよう!

752人が本棚に入れています
本棚に追加