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「…っやめて…久っ!」
力任せに押し退けられて、久孝は向かいの壁に背をぶつけた。
途端、堰を切ったように笑い出す。
「何笑ってんのよ!」
「悪い悪い。だってお前、すげー馬鹿力なんだもん」
けらけらと笑いながら、久孝は手を伸ばし、彼女の肩を抱き寄せる。
僅かに抵抗する女に構わず、その首筋に顔を埋めた。
「プールオムの匂いがする。デートだったんだ?亮太(りょうた)と」
「!」
答える代わりに頬を真っ赤に染め上げて、菖は彼の胸から逃れようと、もがく。
「だめ。逃がしてやんない」
ますますその腕に力を込めて、久孝は菖を抱きしめる。
「…!久だって!」
やっとのことで肩から上だけを動かせる体勢を取って、彼女は彼を睨みつける。
「このシャンプーの匂い、ウチのじゃないじゃん。どこでお風呂入って来たの?」
「…ばれた?」
思わず失笑して、久孝は彼女を抱く腕をゆるめる。
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