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普段ストックを置いてある棚を覗き、手元の空箱を確かめて、彼は愕然とした。
午前零時。
同居人が帰宅する気配はない。
煙草なしで彼女が戻るまでの時間をやり過ごす自信は、なかったから。
帰りの遅い彼女に、腹を立てている訳ではない。
心配をしているのとも、少し違う。
菖が誰と一緒に居るのかは、告げられずとも分かっていたし、それについてとやかく言う権利は、久孝にはないのだ。
…ただ。
ただ、彼は落ち着かなかったのだ。
彼女の居ない、その部屋に居るのが。
数え切れぬ程の鳥籠に囲まれた、その部屋に。
たった、ひとりきりで。
菖は鳥籠が好きだ。
鳥籠と名のつくものなら、その大きさも素材も、形でさえ、何でも構わないらしい。
手の平サイズから、サイドテーブル代わりになるサイズ。
鉄製、木製、竹製に張子。
四角、円柱形、ドーム型。
ありとあらゆる彼女のコレクション。
それらは、この2LDKの部屋の至る所で、ただ静かにたたずみ続ける。
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