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まるで何年も前から、そこにそうしていたかのように。
無数の格子で構成されるその入れ物たちは、光を浴びることによって、部屋中に複雑で美しい幾何学模様を織り成す。
日の光に透けて瀟洒な影を描き、月の明かりに沈んで怪しく艶めく。
オリーブとダークブラウンを基調に、落ち着いたモダンテイストでまとめられた筈のこの部屋は、お陰で一種独特の雰囲気をかもし出していた。
そして、久孝もそれが気に入っていた。
その部屋が鳥籠で埋め尽くされていることの、意味。
それに、気付くまでは。
そんな部屋で、彼と彼女が暮らすようになってから、もうすぐ六年が経とうとしていた。
木製のブラインドの隙間から覗いた夜景には、かすかに雨が混じり始めたようであった。
街灯の仄暗い明かりの中に、いく筋かの細い光が、浮かび上がっては消えていく。
…やっぱり降って来たか。
この冬は、寒さが然程でない代わりに雨が多い。
久孝は雨があまり好きではなかった。
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