鳥籠の部屋

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頬を膨らませながらリビングに出て、菖は、金魚鉢の金魚に餌をやる。 もちろん、鳥籠の中に入った金魚鉢だ。 一度、これについて意見してみたことがある。 餌をやる時や、水を替えるのに不便じゃないか、と。 『猫にとられる心配がなくて、いいじゃん』 それが彼女の答えだった。 ペット禁止マンションの五階に猫が居るかどうかは、聞かないことにした。 「久?聞いてる?」 突然目の前に近付いた菖の呆れ顔に、久孝は驚く。 「悪い。聞いてなかった。何?」 「土日は休み?って聞いたの」 「ええと…。土曜は昼に取引先との約束があって、日曜は休み。お前は?二日とも休み?」 うん、と肯いて、菖は飲み干したビールの空き缶をシンクに置く。 こんな会話をしていても、彼らが休みの日に一緒に出かけることは、全くと言ってよい程ない。 食事や映画は勿論、近所のスーパーまでの買出しでさえも。 その代わりに、彼らは一日中この部屋に居た。 何をするでもなく、ただ二人で。
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