‡人形‡

5/6
前へ
/6ページ
次へ
「店主…何故涙を…」 『嬉しいんだ。』 ―嬉しい―? 「私を棄てられて嬉しいのですか…?」 『違う、君はもう、苦しまなくていい。』 「…。」 意味が解らなかった。 私は一度も苦しんだ覚えは無いのに。 『…時間だ。今日君は、新しい主人の元で、新しい名前で過ごす事になる。』 「新しい…主人?客の事ですか?」 『…お客じゃない、主人だ。』 店主はそう言うと、私を立ち入り禁止の通路に通した。 いつもは、違う通路を使うのに。 薄暗い通路を店主の後に続くと、光が見えてきた。 店主は木でできた引き戸を右に引いた。 すると、見たことのない風景が私の目に飛び込んだ。 .
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加