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「店主…何故涙を…」
『嬉しいんだ。』
―嬉しい―?
「私を棄てられて嬉しいのですか…?」
『違う、君はもう、苦しまなくていい。』
「…。」
意味が解らなかった。
私は一度も苦しんだ覚えは無いのに。
『…時間だ。今日君は、新しい主人の元で、新しい名前で過ごす事になる。』
「新しい…主人?客の事ですか?」
『…お客じゃない、主人だ。』
店主はそう言うと、私を立ち入り禁止の通路に通した。
いつもは、違う通路を使うのに。
薄暗い通路を店主の後に続くと、光が見えてきた。
店主は木でできた引き戸を右に引いた。
すると、見たことのない風景が私の目に飛び込んだ。
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