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‥ぼくは自転車にのって、古びて黒ずんだコンクリートの橋をわたる。 川水はおちついていて、石のおおい、川原の合間にほそい流路を蛇行させている。 川の対岸に、デコボコとした張り出しをもつ家並の連なりがみえる。 いぜんお好み焼き屋をやっていた家には、いまも、イカ玉ぶた玉と墨書きされた板切れが、張り出しの手すりに打ちつけられている。 そのとなりの旅館が、ぼくの家だ。 橋を渡り、右へ曲がる。 緩い登り坂のほそい道は、この町のかつての目抜きであったらしい。 「ただいまあ」 ぼくが引き戸をあけると、すでに顔を赤くした常連さんが、サツマあげをつまみに一杯やっている。 「おお!ボンか!おかみさん、ボンがかえってきたで!」
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