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「うん。あたし休みなんだけどさあ、おかあさんが‥」 サクミちゃんのそのこえをききながら、‥もっと、そのこえをきけばいいのに、とおもいながら‥ぼくは、上がり框に足をかける。 階段のはじまるきわには、壁龕めいたくぼみがあって、かんたんな台のうえに公衆電話がのっている。 ぼくが子どもの頃には、ここに囲いがしてあって、帳場になっていたような記憶がある。 壁とおんなじ、飴いろの化粧板なのでわからないが、そこにとびらがある。 とびらのおくになにがあるのか知らず、ぼくは、自分の家のことながら、どこをどういけばこのとびらの向こうにいきつけるのかわからない。 狭くきゅうな階段をのぼり、きしきしとなる廊下をつたう。 お客の部屋が南面していることはあたりまえだ。
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