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窓からは川面が一望できる。 鮎釣りの時期と夏の川遊びのころにポツポツとお客はあるけど、それいがいは閑古鳥。 父がクルマで一時間もかけて工場に働きにいくことで、わが家は成り立っている。 ぼくも高校には、自転車で一時間以上かけて通っている。 降雨時には通行禁止になるような道を通って。 そういえばサクミちゃん、高校進学には、いっそ親類の家にあずけたほうがいいのかも、とご両親が話していたらしい。 ‥きがえて、部屋のまえの廊下にある窓をあける。 北面した窓からは、道向こうの高台の上‥というか、いっそ崖の上といったほうがいい場所にある、電車の駅のホームがみえる。 路線脇のトラスが、ホームからの侘びしい灯りに、浮かび上がる。 その向こうにも、山かげの重い暗色とまばらな人家の灯りがつづく。 もう、ずいぶんと暗い。
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