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陽が落ちる。
夕陽に染められた茜色の空。
この空を見ると、故郷の空を思い出す。
懐かしい故郷の村。
**side Kanarie**
「おーい!カナリぃー」
振り返るとそこには懐かしい顔が。
「マーク!」
「カナリーお久しぶりぃ。元気だった?」
「元気だよ。いつ戻った?」
「今朝だよ。カナリー会いたかったよぉ~!」
この馴れ馴れしい男はマーク・サン・ドュ・フラワー伯爵。
8年来の悪友。
彼についての紹介は省略。
「よっ!カナリー久しぶり」
「ショーン!しばらくぶりだね」
この爽やか系はショーン・シープ・スカーレット侯爵。
こちらは8年来の友人。
彼の紹介を少々。
父君は陛下の政を助け庶民からも慕われる名宰相で、母君は王室の親族。
彼も父のような政治家を目指し、現在は外交を主とした政務に就いている。
王宮内での評価が高く、父君と並んでこの国を動かす人物となるのは間違いない。
スカーレット家はイングリッド有数の名家で、彼は次期当主だ。
つまり、俺のような貧乏貴族とは住む世界が違う御方なのだ。
しかし、ショーンは家柄を鼻にかけるでもない。
庶民の生活を第一に考え、税について学び、貴族・庶民が共に支え合う社会を理想としている。
実に爽やかな男だ。
同性の俺でも惚れ惚れする。
「俺たち今から飲みに行くの。カナリーも行こうよ」
「俺の奢りだ」
「いいねぇ!」
久しぶりの悪友との再会だ。
今夜は飲み明かしてやりますよ。
「カンパーイ!!!」
「クゥ~!やっぱりイングリッドの酒は美味いね!!」
「そりゃそうだろう」
「水が美味しいから酒も美味いんだね」
3人が集うのは1年ぶりかな。
マークが海に出てからは顔を合わせる機会が減った。
俺とショーンは王宮で陛下に仕えているが、広い王宮では姿を見掛けることも少ない。
寄宿学校にいた頃は、何をするのも3人一緒だった。
ショーンはイングリッド。
マークはストランド。
俺はアキハ。
出身がバラバラの3人だが、何故か気が合った。
ショーンもマークも王室の親族だが、俺のような貧乏貴族を対等に扱ってくれた。
家柄で2人に引け目を感じることはあったが、それは俺だけで、彼らは気に留めることすらなかった。
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