The Wilderness

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「マーク。心惜しいが陽が落ちる前にストランドを出るぞ」 「今から発てば今夜中に国境の街まで行けますからね」 「そだね」 一度海に出ると、数年は帰国できない。 父上。お元気で。 母上。安らかに。 そして生後2日で天に召された最愛の妹。 お前にも、美しいストランドを見せてやりたかった。 父上と母上にたくさん愛してもらうんだよ。 世界一幸せにね。 「来年も来れるといいな」 「また帰国命令を出してあげますよ」 「ありがとう。カナリー」 ストランドには夜を明かす宿は無い。 国境の街まで馬を走らせる。 ショーンちゃんのヘレックスとカナリーのフリッターと俺のホムズ。 3頭共に国内きっての名馬だと呼ばれているけど。 「ヘタレックスは名馬の風格が出てきましたね」 「ヘタレじゃねぇっつうの!!」 「ホムズは一段とデブったみたいですけど?」 「やっぱりぃ!!俺もそう思う」 「お前、餌やりすぎ」 「だってぇ。美味しそうに食べるんだもん」 「そりゃデブるわ」 ショーンちゃんのヘレックスは女王陛下から賜ったんだって。 白馬は上流の証。 さすが名門スカーレット家だね。 カナリーのフリッターは近衛隊で活躍中のエース。 現役バリバリのオーラ出まくり。 ツヤツヤの黒い毛並みがいかにも自信たっぷりって感じ。 で、俺のホムズだけど…。 葦毛の可愛いお馬ちゃん。 でもね…。 最近太ってきたみたい。 毛並みもゴワゴワしてきて、遠目で見ればブチ模様に見えちゃう。 まるで大きな猫みたいな感じなのよん。 どーしましょ?   「どーしましょって。運動させればいいでしょ」 「このままデブり続けると引退だぞ」 「いやーん!!ホムズ頑張ろうね」 -ヒヒーン 「いい子だね」 ホムズは田舎でのんびりと暮らしたいのかもしれない。 いつかストランドに緑が戻ったら。 その時は、一緒に暮らそうね。
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