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国境の街に着いた。
この北はストランド。
**side Majune**
10年前のあの日はこの街にいた。
ストランドに入る検問所で足留めをくらったから。
もし、すんなり通過できていたら、俺たちも巻き込まれていただろう。
ジプシーに故郷は無い。
だけど、俺はストランドが好きだった。
もしも、どこかの土地に住めるとしたら迷わずストランドを選んだと思う。
噂に聞いたけど、ストランドはいまだに花が咲かないとか。
キレイなひまわり畑はもう見られないんだね。
今夜は満月。
メロは元気にしているかな。
一度くらい文を寄越せよ。
月の輝きは冷たい。
まるで氷のような光だ
「ジプシーで終わりたくない」
メロはそう言った。
バカなヤツ…。
俺たちはジプシーだ。
流れるしか生きてはいけないのに。
「流れてないから」
こうも言ったね。
メロ。
俺は何もしてやれない。
兄貴なのにな。
何一つ与えてやれない。
俺にできることはたった一つ。
お前の幸せを祈るだけ。
ごめんね。
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