The Wilderness

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「キレイな月」 「そだね」 **side Shaun** しばらく北の街に滞在しようと言ったのはカナリーだった。 マークを思いやっているんだな。 「満月だね」 「昨夜が満月だったでしょ」 「それじゃあ、今夜の月は何?」 「さあね」 マークとカナリーの会話は、数年前の俺とマジュンを思い出させる。 マジュンもこの月の名前を知りたがっていたな。 「ショーンちゃんなら知ってる?」 「知らねぇ。つか、“ちゃん”はやめろって」 「また言われてやんの」 「ごめんね。ショーンちゃん」 「お前とは、この先もずっと言い合っていると思うわ」 変わらない幸せもある。 マークとカナリーと俺。 このままで居たいと願う俺がいる。 一度流れを止めてしまえば、再び流れることは出来ないと知っているのに。 「温泉っていいね」 「泳いじゃダメですよ」 「ぶぅー」 「お前、艦隊でも海にダイブしているらしいな」 「気持ちいいよぉ~♪」 「クジラの餌になっちゃいますよ」 「いやんッ」 海がそんなに好きなのか。 マークが陸に戻る時は、ストランドが復興する時。 見たか。 あの惨状を。 あの土地に人が住めるようになるのは遥かに先のことだろう。 俺たちが生きている間に、人々の笑顔が戻る日が来るのだろうか。 停戦中ということは、また戦が始まる恐れを否定できないのだから。 「河原の方に篝火が見えるよ」 「篝火?」 「あっちだよ」 マークの指差す方向に目を凝らすが、それらしきものは見えない。 月明かりをもってしてもただの暗闇だ。 「お前の目は千里眼か?」 「大イングリッド艦隊を舐めちゃいけないよ」 「マークが見えるって言うんだから、何かを燃やしているのでしょうね」 「だから篝火だって。人が集まっているんだよ」 「集会とかなら面倒だな」 「確かに」 「知らんぷりしとこうね」 何故、集会だと決めつけてしまったのか。 ジプシーとして育った俺が、なんたる失態。 やはり、滞ってしまえば腐るしかないのか。 流れていたいと願えども…。
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