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あっけないものだな。
人の一生なんて。
**side Shaun**
父が亡くなって2ヶ月。
葬儀や何やらで慌ただしく過ぎた。
憔悴しきり、何を聞いても上の空だった母も安定を取り戻しつつある。
少しずつではあるが、また、日常が戻ってきた。
メロが母の世話をしてくれている。
すっかりメロに頼りきっている様を見るのも悪くはない。
母はメロを実の娘のように可愛がっている。
「娘がほしい」が母の口癖だった。
だから、メロが我が家にきてくれて嬉しいのだと言って微笑む。
娘ができて嬉しいのだと。
俺はメロを妹としては見ていない。
メロは愛する女性。
それは、幼い頃からの変わらぬ愛なのだ。
母の見立てた淡いピンクのドレスを纏うメロ。
陶器のように透き通る白い肌は人形のようだ。
ジプシーでいた頃は日焼けしていたのにな。
「磨き甲斐があるわ」と母は言う。
俺はどちらでもかまわない。
メロはメロだ。
側に居てくれさえすれば…。
だが、不安になるときもある。
メロの中に俺の居場所はあるのか?
メロの瞳に俺は映っているのか?
窓の外は漆黒の闇。
街の喧騒は、雪に包み込まれたのだろうか。
静かだ…。
暖炉の灯りを眺めながら、船上の友を想う。
マークは夜が嫌いだ。
特に今夜のように月の出ない夜が…。
連隊長へ昇進したと聞いた。
出世街道を突っ走っているな。
どこまで偉くなるつもりだ?
だけどな。
もう、その辺でやめておけ。
「貴方の当主御披露目パーティーへお招きする方々への招待状が出来上がりました。メロが作ってくれましたのよ」
押し花をあしらった招待状は、一つ一つメロの手作りだ。
可憐で美しい。
まるでメロそのもの。
「へぇ。上手じゃん」
なんだよ。
ヘタレ!!
もっと上手く褒めてやれよ。
「ありがと。ショーンに気に入ってもらえるか心配だったの」
ショーン…。
この屋敷にきてから、メロは俺の名をこう呼ぶ。
間違いではないのだが、一抹の寂しさは拭えない。
俺はメロに“アヤ”と呼んでほしいのだ。
「パーティーなんて恥ずかしいよ」
「当主のお披露目なんだから、頑張ってね。それに、お誕生日でしょ。ダブルでおめでたいわ」
「いや、むしろ、誕生日パーティーも兼ねるってのが最大級の赤面要因なのだ。
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