dark night

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幼い頃はジプシー流の誕生日だった。 父さんがいて母さんがいてマジュンがいてメロがいて。 ささやかな料理しかなかったが、楽しかった。 いつになく上機嫌な父さんが踊り出して、俺に歌えと言ったんだ。 それが、嬉しかった。 「マジュンは来るかな?」 「場違いよ」 「そんなことない」 「お兄ちゃんは、流れているから…。」 「そうだったな」 そうだった…。 流れを止めてしまったんだ、俺たち。 俺が、メロの流れを止めてしまったのだ。 「メロは後悔しているか?」 「何が?」 「流れを止めてしまったことだ」 「してないわ」 「本当か?」 「ええ。とっても幸せよ」 メロの横顔を眺めるこの時間。 永遠に続けばよいと思うのだが、子供っぽいか? 「もう…。」 「もう?」 「月を探さなくていいもの」 「メロ?」 「アヤを思う時、いつも月を観ていたわ。だけど、闇夜はアヤが見えなくて。怖かった」 「そうか」 俺はメロの肩を抱き寄せた。 愛しい。 この世の何よりも愛しい。 母が見ていなければ、押し倒してしまいそうだ。 ギリギリの理性を与えし我が母よ。 あなたの母性に、今ほど感謝したことはないでしょう。 しかし、今ほど間の悪さを恨んだこともありません。 「だけど…。ショーンは…アヤじゃないわ」
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