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夜。
曇っているのか、月も星も見えない空の下、一人の青年がまるで何かから逃げるように走っていた。
いや、事実逃げていた。
時刻は深夜の25時過ぎ。繁華街というわけでもないその場所に、人の気配はほとんどない。
青年は走りながら後ろを振り返る。その目には、彼を追う黒い影が数体映る。
「くそっ…」
青年は逃げきれないことを悟る。彼よりも追う者のほうが速かったのだ。
逃げられないと判断すると、青年は走るのを止め、身構える。
すると、青年の左腕から黒い何かがゆらゆらと放たれ始めた。
追いついた黒い影がひとつ、青年に飛びかかる。
しかし、青年はそれを躱しざまに一撃、拳を入れる。
思わぬカウンターを受けた黒い影は、体制を崩し、地面にダイブした。
突然の抵抗に他の黒い影たちは動きを止め、青年を警戒しながらゆっくりと取り囲むように展開する。
動きが遅くなったことでようやくその姿をはっきりと捉えることができた。
青年を取り囲んでいるそれは、黒く大きな犬のように見える。
しかし、彼らがただの犬ではないことを青年は知っていた。
「猫派なんだけどな…」
そう呟くと、青年と獣の群れは交戦状態に入った。
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