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二人は席につき、青年はハンバーガーの包みを開けて食べ始める。少女も真似てチーズバーガーを手にとる。
(この前の黒服の一人。あの慣れた様子から考えてもこいつは化物退治人ってところか…?)
先日を思い出しつつ少女のことを考察する青年をよそに、当の少女はバーガーとシェイクに感動していた。その様子を見た青年は、
(やっぱりこいつ初めて食べたみたいだな…この店でこんな顔してるやつ初めて見た。)
と、少し緊張が緩んだ。少女の幸せそうな表情はとても可愛らしいもので、月下の死神とはまるで別人だった。
二人ともおおかた食べ終わった頃、シェイクを飲みながら少女が切り出す。
「さてと…じゃあ話す前に一つ確認しとくことがあるの。」
「確認?」
「そう。私たちのことや君を襲ったものについて全てのことを知るっていうのは、こっち側の世界に足を踏み入れるってこと…それでも知りたい?」
「こっち側の世界にって…踏み込んだらどうなる?」
「今までの生活には戻れないかな。戦いが常となる…もちろん命のかかった、ね。」
「…そっか。まあなんとなく覚悟はしてたけどな。」
「どうする?そのなんとなくの覚悟は、本物?」
「本物ってことで。一応おれにも戦えるだけの力がある。力がある者にはそれを活かす義務があるって昔教えられてさ、その通りだと思うんだ。だから、話、聞くよ。」
「…分かった。そうだね…じゃあまずは私のことからかな。自己紹介もしてないし。」
少女は名乗りを始める。
「名前は閻魔真琴、種族は死神。この辺の地区担当の班の班長なの。」
「………。」
(閻魔、死神、地区担当、班長…)
青年は、それらの単語と状況を照らし合わせながら話に耳を傾けた。
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