鈴蘭、胡蝶、タナトス

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 ――我にタナトス神の加護あれ  手にしたスズランを花から根まですりつぶすと、僕は牛乳パックを手に取った。  ミキサーに牛乳を注ぎ、すりつぶしたスズランを入れる。  最後にハチミツや砂糖を適度に入れてスイッチをONにする。 「ふふ、君の驚いた顔が早く見たいよ」  部屋の片隅にある胡蝶蘭がそんな僕を静観するように静かに咲いていた。  健二、君を殺そうと思っていたと言ったら君は驚くかい?  何故って? 5年間付き合っていた彼女の唯を君に取られたからだよ。  君は知っていたかい?  僕は全てを知っていたことを。  君が密かに唯と会っていたことも、仕事と言っては唯が君の家によく泊りがけで出かけていたことも知っていたってことを。  別れる時、ただ「ごめんなさい」と唯は言っていたよ。  僕は理由を聞かずに別れを受け入れたさ。  僕は全てを知っていたからね。  でも、君は何も言ってこなかったよね。  君には失望したよ。僕が全て知っているとも知らずに。  君は唯と付き合うのだろ?  そんな君を殺そうと思うのは当然じゃないか? 「ほら健二、これが僕の特製びっくりドリンクだよ」 「おぅ、ありがとな」  そう言うと、健二は疑うことなく薄緑色の液体を口に運ぶ。  さあ、健二。僕の特製スズラン入りのミルクを味わうと良い。 「なんか、ちょっと不思議な味がするな」 「そりゃあ、そうさ」  ――だって、それはスズラン入りの特製ドリンクだからね
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