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そして彼女は、レイヴンにハンドルを手放させ、左前方の敵に急接近し、盾にしていた左手の刃を、勢い良く薙いだ。
刹那、空気が爆ぜ、衝撃波が発生し、急激に迫る彼女に怯んだ敵を、二人纏めて吹き飛ばした。
同時に、レイヴンは右手に取った散弾銃を、右に伸ばし、放つ。
近距離から広範囲に打ち出された散弾が、迎撃を試みた敵の出鼻を挫き、戦いの舞台から叩き落とした。
だが、その時、レイヴンとナルクヮは、その独特な発砲音を耳にした。
「やばっ……!!」
直後、二人の乗るバイクの目の前で爆発が起こり、発生した爆炎に飲み込まれた。
ナルクヮが敵を吹き飛ばし、そこに味方が居なくなったタイミングで、グレネードランチャーが撃ち込まれたのだ。
回避不能な状況に撃ち込んだ為、一瞬敵達が手応えを感じたのが判る。
しかし、直後にそれは戦慄に変わる。
真紅のバイクは、爆炎の前ではなく、上へと抜け出した。
ナルクヮの瞬間的な判断と操縦により、爆発の上に乗り、その勢いで大きくジャンプしたのだ。
敵軍を飛び越す軌道で跳んだバイクの上から、レイヴンは散弾銃を拳銃に瞬時に持ち替え、意表を突かれた敵に向けて、撃ち降ろす。
残る敵のバイクは五台。
レイヴンが放った銃弾は五発。
そして、ナルクヮのバイクは、滑らかに着地した。
銃弾は止み、レイヴンは振り返って状況を見る。
併走して壁となっていた車は五台。
その車に向かって発砲してみるが、ガラスも車体もタイヤも弾を通さない。
(やはり、防弾か。
さっきグレネード撃ちやがった奴も、引っ込んだな……。
あいつに任せるか……)
諦めて進行方向を確認すると、離れて一台。
あれがターゲットらしい……。
「……流石だな、ナルクヮ」
「ちぃと焦ったけどな。
さて、あれの中に、ターゲットが居るわけだな?」
「そうらしい……。ん?」
すると、不意に後方の五台が、陣形を変え、道の両端を走り、中央に通り道を作る。
その瞬間だった。
突如、前方の一台が急ブレーキをかけ、一気に二人に迫った。
「うぉっ!!?」
ナルクヮは間一髪でそれをかわし、直撃を避けたが、その一台は、出来た通り道に吸い込まれ、直後に五台が陣形を元に戻した為に、視界から消えた。
「……っぶね~。んだよ、抜かれる事も想定済みか、クソが」
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