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ナルクヮがそう吐き捨てた時。
不意に二人のイヤホンに、彼女の声で通信が入る。
『ーー。ダイヤモンド、ロックーー』
「! ガーネット、了解!」
それにやや遅れて、敵軍も変化が起きた。
唐突に車の上が赤黒く光り、そこに、無数の漆黒の人影が立ち上がり始めた。
その影達は、皆手に銃火器を手にしているのが見える……。
「……ポーンだ……」
「! マジかよ!」
ふと告げると、ナルクヮは苛々と言い放つ。
分が悪いのを理解しているらしい。
「ナルクヮ、離脱しろ。このままじゃ只の的だ。後は俺が繋ぐ」
「あいよ! 無理はすんじゃねーぞ」
「おう」
そう答えた直後の事。
レイヴンは開錠し、その背に大きな漆黒の両翼を広げる。
そしてバイクから離れ、真横に落下する様に、真っ直ぐに車へと突っ込み、身を翻して、右から二台目の車のフロントガラスに着地した。
それと同時に、ナルクヮはハイウェイから離反し、道路脇の荒れ地に飛び出すと、バイクを停止させ、一団を見送った。
「……アウトしたぜ」
『オア、了解っす!』
そしてナルクヮはエンジンを停止させ、一息付き、煙草をくわえ、火を付けた。
「……らぁっ!」
群がるポーンを、後方回し蹴りで吹き飛ばし、双銃を乱射し、消し飛ばす。
敵の群れの中央に飛び込んだ事により、敵は発砲する機会を失い、逆にレイヴンはどこに撃っても敵に当たるという、有利な状況と化した。
その時、イヤホンから再び通信が流れる。
『ーーエイム、ファイブ。待機します』
「了解。かなり強い防弾だ。タイミングを指示する。そのままスタンバイ、距離測定だ、ヴィヴィ」
レイヴンは、通信にそう応えた。
「……了解しました、ロード。
……38……37……36……」
道の中央で片膝を付いて、狙撃銃、NGC 40389を構えるヴィヴィが、迫り来る敵との距離を示す数字を口ずさむ。
「32……31……30……」
『15で撃て、次いでワンだ』
「了解、ロード。……25……24……23……」
「こっちは10で行くね~」
『あぁ』
ふと、ヴィヴィの少し後方に控える少女が、屈伸運動をしながら言った。
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