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直後、クラッシュした四台と、切り裂かれた一台が、宙を舞い、地を転がる派手な大回転の後に、大爆発を起こした。
「わとっ……!?」
その爆風に、勢い良く着地したキャットの身体は煽られ、只でさえ不安定な姿勢だった為に、コントロールを失い、倒れかける。
しかし、転倒寸前で、彼女の身体は支えられた。
黒い翼を広げる彼が、舞い降りて受け止めてくれていた。
「大丈夫か?」
「……にゃ……別に、受け身くらい取れるから……」
そう言いつつも、キャットはレイヴンにしっかり体を預けている。
レイヴンの喉元に達するまで大きく成長した、十七歳になった彼女。
けれど、中身は相変わらずだ、と、レイヴンは小さく鼻で笑う。
「ロード!」
すると、彼の右隣に、ヴィヴィが舞い降りた。
その顔は、どこか後ろめたそうだ。
「ロード……その……申し訳有りません……。ロードのご指示では、ファイブとワン、一番右と一番左を狙え、との事でしたが……その……独断で、左から二番目を……」
「結果オーライだ。良くやった、ヴィヴィ」
もじもじと、歯切れの悪い彼女に、レイヴンはふと、半分呆れた様に笑いかける。
「ですが……一台、逃げられてしまいました……申し訳有りませ……」
「ドンマイ、気にすんな、以上!」
「だ~からヴィヴィ、ストイックすぎだって~」
「そ……やっぱり、そうなのよね……」
キャットに苦笑いされると、ヴィヴィは肩をすぼめる。
レイヴンはそんな彼女の頭に手を置き、微笑みながらゆっくりと撫でた。
「……ロード……」
彼の穏やかな優しさが伝わる掌に、彼女は頬を染め、少し恥ずかしそうに目を伏せた。
すると、その時だった。
「……だ~、やってくれやがりましたね~」
「!!」
突然の声が、どこからともなく聞こえる。
直後、三人の背後に気配と殺気が迫り、咄嗟に振り返った時だった。
そこに、地中から浮上する様に二人、現れた。
どちらもサングラスを着用した、女。
長い金髪と、短い黒髪。
身に纏う、見覚えの有る黒いライダースーツから、レイヴンは察する。
全員フルフェイスヘルメットだった為、顔を見るのは初めてだが、この二人が、ユテアが言っていた、バイクの一団の中に居た天照……。
先程全滅させたと思っていたが、やられたフリでもして、気配を消して潜んでいた様だ。
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