5人が本棚に入れています
本棚に追加
不協和音。十人中十人が眉をしかめるであろう音の波が見えない刃となって庭の雑草を切り裂いていく。化け物は急ブレーキをかけると転身し、音から逃れる。
その間にも次々と音は弾かれ、森の木々を傷つけながら刃のドームを形成していく。皮膜状の翼であれだけ大きな体を持ち上げ続ける事は難しい。超上空に逃れる事も出来ず、化け物は再び勝利へと堕ちるように滑空してきた。
向かってくるのならば後はどうにでもなる。弾かれる音が化け物を迎え入れ、黒い体にスリットを入れていく。だが流石に化け物、体を細切れにしきる事は出来ない。
牙が顔に突き立てられる寸前、勝利は足を浮かせて右腕を振るった。ピアノ線が化け物の顔を絡めとり、弾いて雑草の上に転がす。
既に両手両足はぼろぼろになっていて、立ち上がる事もままならない。そんな化け物を見下して、勝利はアルミ缶を取り出した。
「混沌に還れよ、オールドタイプ」
プルタブが外される。森の中に響いた銃声は、化け物をハチの巣にし、欠片も残さず消滅させた。
■□■□■
かつて地球上にはとんでもない類(たぐい)の生き物達がごろごろといた。それこそアヤカリなんて話にならない、「お前ら戦うな」と言いたくなるようなトンデモ生物達だ。
最初のコメントを投稿しよう!