Horror Killer

6/13
前へ
/13ページ
次へ
 また十数分ほど歩くと森が開け、屋敷が建てられている場所に出た。依頼主である少女、クリスティーナから、この森に誰も住んでいない事は聞いている。十数年前までは物好きの伯爵が住んでいたが、既に他所に移り住んだとか。  おそらくこの屋敷はその伯爵の持ち物だったのだろう。しかしもう十数年も人が住んでいないにしては小ぎれいだし、生活感がある。かつては鮮やかな花々を咲かせていたであろう庭は雑草に覆われていたが、手入れがされていないわけではない。  勝利は目を細めると屋敷に近付いた。ドアノブを回せばガチャガチャと音がして回りきらない。純粋に鍵がかかっているのだろう。  少しばかり息をつき、腰のホルダーから180mlサイズのアルミ缶を取り出す。軽く振ってからドアに口を向け、プルタブを開けた。  カシュッという軽い音の直後、轟音が響く。簡単に言えば乗用車がブロック塀に全力で突っ込んだ音だ。それを受けた途端扉ははじけ飛び、周りの壁も一部分えぐれる結果となった。  これが勝利の能力だった。あらゆる音を保缶し、開封する事で効果を与える事が出来る。無差別で広範囲に渡るため、集団行動の時に使うと大変な事になるが、一人で行動する時には便利な能力だ。本物の音を保缶しないといけないとか、使い捨てだとか、難点も多くあるが勝利はこの能力を気に入っている。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加