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「ビバルディ、か……どこかで聞いた名だな。まあどうでもいいが」
ヒマントロフスは長い髪を白い指で払った。
「察するに、君はここに住む怪異を打ち倒しに来たのか?」
「あー、まあ、そんなところだけど……」
何だろう、先ほどからやけに上から目線で見られている気がする。年は勝利の方が上に見えるのに、ずっと年上のように感じるというか。尊大な口調がそう感じさせるのかもしれない。
「ふむ――なら私は引き下がった方がいいだろうな。ボランティアが本職の仕事を奪ってはいかんだろう」
「え」
勝利の能力は回数制限がある。手伝ってくれるならそちらの方がいいのだが。
「ところで君は打ち倒すべき敵を分かっているのか?」
「あ、いや……」
予想はつけてあるが分かっているわけではない。首を横に振るとヒマントロフスはふぅ、とため息をついた。
「やれやれ、そんな事では先が知れるな」
「ぐっ」
どうして初対面の小娘にそんな事を言われなければならないのだろう。反感を覚えた心は、しかしヒマントロフスの次の一言でまったく別の色に変わった。
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