【承前】佐生拓未の場合

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「昨日未明、5人の男が殺された。1人は70過ぎの無職男性。現場はやっこさんの自宅だ」 「5人てのはちょっと多くないですか」 と、佐生は端正な眉をひそめた。 「妙なところはそれだけじゃねぇ。他に殺された4人は、全員、シチリアマフィアの下っ端だ」 「どういう事ですか、それ?」 「さあな。 そいつを調べるのが俺達の仕事だろうが」 と、武中はあまり広くはない肩をすくめた。安物のスーツに皺ができる。 佐生もそれを真似し、おどけて肩をすくめた。 「何、真似してんだ」 と武中は、低い声で言った。本気で怒っている訳ではない。 彼にとって娘と同じほどの歳の佐生は、良い相棒であったし、可愛い後輩だった。多少、憎まれ口を叩くのもご愛嬌だ。 「いや、ベテランみたいな事、言うなーと思って」 「お前なぁ………」 ため息を吐くように言葉を吐き出すと、武中は懐の特殊警棒へと手を伸ばした。 「いや、嘘です!嘘嘘! 冗談!冗談!!」 不穏な空気を察知した佐生は慌てて手を振った。 「タケさんは凄いと思いますよ!」 「あぁ?」 焦って継いだ佐生の言葉に、武中は怪訝そうに問い返した。
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