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途端、志穂はその手を払った。
はっきりと拒絶したのだ。
呆然としていた小唄ちゃんが徐々に泣き出しても、ママであるはずの志穂は関心のない目で見ているだけだ。
「おい、志穂!」
夫である西村さんが咎める声でその名を呼んでも、彼女は気味が悪そうな顔で私に向き直った。
小声で囁く。
なに、この人達。ショコラの何なの?
一応西村さんの言葉を理解していたつもりだったけれど、想像以上に事態は深刻だと実感した。
家族が分からない、なんて。
しかも幼い小唄ちゃんまで拒絶するなんて。
確かに高校時代の志穂は人見知りも激しくて、潔癖で、『認めない人間』を受け入れようとしないところがあったけれど。
あれから年月が過ぎて、仕事して、結婚して、出産までして。
新しい家族を育んだ志穂は、柔らかく笑う幸せそうな女性だった、のに――。
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