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温くなって甘さが増したコーヒーを一口。そして一息に流しこむ。
空になった紙コップをゴミ箱に捨てて、私は再びため息を吐いた。
『ショコラ』…そして『シフォン』。
その冗談のようなあだ名は、私と志穂が特別に仲が良かった頃の忘れ形見のようなもの。
『ダーリン』とか『ハニー』とか。そういう甘い響きを持っていた、特別な呼び名。
――なんで今更?
まるでそっと愛を囁くようにあの名で私を呼んだの?
冗談のつもりなら、私は志穂をひっぱたいている、だろう。
でもあの目は、ふざけているものじゃなかった。
微睡みから目覚めて、一番に恋人へ微笑みを送るような――。
(もう、そんなんじゃないのに)
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