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赤信号になっている東西の、歩行者用信号機に設置されている小さな黄色のスピーカーから、視覚障害者の為の規則的に流れる誘導音に、眠気を誘われ呆とする。
比較的交通量の多い、片側二車線の道路を挟んだ向こう側には、丁度横断歩道の正面に、24時間営業のコンビニがあり、通学・通勤客の出入りも多い。
聖の通う公立高校の他に、私立の女子高や中学もこの近辺に点在している。
数年前にコンビニが出来た当初は、主に学生客ばかりだったが、交差点のすぐ傍に、昨年JRの新駅が出来て以来、通勤客の利用もグンと増えたようだ。
ひっきりなしに行き交う人の流れを、見るとはなしに何となく目で追っていた聖は、コンビニとその隣に建つ旅行代理店のビルとの間にある、細く狭い空間に人影があるのに気付いた。
その隙間は、人一人が入れるくらいの広さで、奥行きもさしてない。
主に、周辺の店舗が、企業ゴミの集積所として利用しているようなスペースだった。
あんな所で、何してるんだろう?
ゴミを出しに来たという様子もなく、ただ立っているだけのようなその姿に疑問を感じた聖は、ついその人影を注視してしまう。
昼間でもさして陽も当たらないようなその暗がりに、20代くらいの女が立っていた。
ジーンズに、薄手のカーディガンを羽織っただけのラフな格好。
少しもつれたような乱れた感のある長い髪。─違う!と気付くが、遅かった。
その女の顔は、額から流れる血で左半分が赤く染まっていた。
その髪は、もつれているのではなく、こびりついた血によって絡みあっているだけ─。
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